多くの加工自動化が進む中で開先加工は、未だに人による手作業で行われているところが多くあります。
しかし、人がひとつひとつを手作業で開先加工すると、仕上がりにばらつきが生じて品質が安定しません。また騒音や振動・切削切子の飛散などによる作業者の身体的負担が大きいため危険が伴います。
そこで開先加工を自動化すれば、人が手作業するより正確に加工できます。
この記事では、開先加工機の種類や特徴、導入事例から導入と使用時の注意点を解説します。また開先加工機を独自で開発・販売しているメーカをいくつか紹介します。
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1.開先加工とは
開先加工とは、溶接前の母材から接合する部分に溝加工する加工法です。
母材の材質や板厚、溶接方法や姿勢などで開先の形状を使い分けています。
また、開先加工には以下2つのメリットがあります。
- 溶接部の強度アップ
- 母材の変形を抑制
隅肉溶接の場合、母材間に隙間があるため接合部の強度が高くありません。そこで母材に開先加工すると、接合部の隙間が無くなって接合部の強度を高めることが可能です。
開先加工に母材を完全溶け込み溶接にすると、母材と同等の強度が実現できます。
また、開先の深さや幅、面積を小さくすると溶接面積を減らし、溶接による母材の熱変形を抑制できます。
2.開先加工機の種類
開先加工できる機械は以下の3種類あり、それぞれの特徴を表にまとめました。
特徴 | |
全自動開先加工機 | 大きい開先にも対応高速かつ高品質 |
ハンディ開先加工機 | 専用治具があるため、加工技術が不要小型かつ軽量で持ち運びが容易作業者の身体的負担が多い |
汎用器具を使用した開先加工 | 加工技術が必要作業者の身体的負担が多い |
順に解説していきます。
(1)全自動開先加工機
全自動開先加工機は、切削刃物の組み合わせや数値制御で開先を正確かつ高速で加工できる機械です。加工できる板厚は薄板から厚板まで幅広く適応していて、キャスタを取り付けて自走するタイプの開先加工機もあります。
(2)ハンディ開先加工機
ハンディ開先加工機は、人が持ち運べるように小型かつ軽量になっている加工機です。別名「ハンドベベラー」とも呼ばれています。専用刃物を取り付けるだけで経験の浅い作業員でも安定した開先加工が可能です。
ハンディ開先加工機は人が加工機を持って加工するため、作業者の身体的負担が大きいことがデメリットです。
(3)汎用器具を使用した開先加工
グラインダーやガス切断機などの汎用器具を使用して開先加工する方法です。一般的に普及している汎用工具を使用して人が手作業で加工するため、加工技術が必要です。そのため開先加工の形状や角度にばらつきが生じ、品質が安定しません。また、加工時間が長くなるため作業者の身体的負担が大きいことがデメリットです。
3.開先加工機の導入事例
ここでは開先加工機の導入事例をいくつか紹介します。導入に向けての参考にご覧ください。
(1)平板の全自動開先加工
平板を全自動で開先加工する機械の導入事例です。
材料寸法や開先加工の角度寸法をタッチパネル操作で数値入力し、スタートさせるだけで後は機械側が自動で開先加工してくれます。
(2)ライン化して生産性を向上させた全自動開先加工
ライン化してH形鋼の加工を完全自動化した導入事例です。
「給材」から「孔加工」及び「開先加工」、「払い出し」までを自動化しています。作業者1名で運用できるようにして生産性を向上させることが可能です。
端材や切子の除去をライン内に組み込むことで、作業者の負担を減らす工夫がされています。
(3)汎用工具とロボットを組み合わせた自動開先加工
産業用ロボットに汎用工具のグラインダーを取り付けて開先加工を自動化させた導入事例です。
加圧コントロール装置を産業用ロボットに組み込むことで、一定の力で加工が可能です。
グラインダーの刃には種類も豊富にあるため、加工の種類も簡単に変更できます。また材料の寸法が異なるものでも、産業用ロボットの設定を変更するだけで加工できます。
4.開先加工機の導入や使用時に気をつけたいこと
開先加工機を上手く活用するには、気をつけるべきポイントが以下3つあります。
- 開先加工するシーンで選定する
- リスクアセスメントを実施する
- ライン化する場合、機械全長に注意
順に解説していきます。
(1)開先加工するシーンで選定する
前述でお伝えした3種類ある開先加工機は、使用するシーンで選定ができます。
使用するシーン | |
全自動開先加工機(設置型) | 大量生産 |
全自動開先加工機(自走型) | 小ロット生産、平板やパイプの加工 |
ハンディ開先加工機 | 複雑な形状、機械が設置できない箇所 |
汎用工具 | 複雑な形状、機械が入らない箇所 |
全自動開先加工の「設置型」は材料を搬送して加工するため、大量生産向けの機械です。
「自走型」は機械がコンパクトなため、材料のあるところに移動させることが可能です。おもに小ロット生産向けの機械で、平板とパイプの開先加工が得意です。
ハンディ開先加工機と汎用工具は、複雑な形状や全自動が設置できない場所での加工に向いています。
(2)リスクアセスメントを実施する
開先加工機を安全に使用するには、リスクアセスメントの実施が必要です。
回転する刃物がむき出しになっている場合などで、想定される危険に対しての安全策を設けて下さい。また、このリスクアセスメントは、開先加工機を使用する企業ごとに設定が必要です。
(3)ライン化する場合、機械全長に注意
開先加工を含めて機械加工をライン化する場合、機械全長に注意が必要です。
加工する材料の全長が長くなると加工の工程間も長くなるため、全体の機械全長が伸びてしまいます。工場に設置できるスペースがあるか確認が必要です。
5.開先加工機を開発する主要メーカとそれぞれの主力製品
最後に開先加工機を販売している主要メーカと、その主力製品をご紹介します。メーカ選定の参考としてください。
(1)大東精機株式会社
ハンドソーマシンやドリルマシン、開先加工機などの鋼材の加工機を開発し販売している企業です。
全国に拠点があり、海外ではアメリカ・台湾に拠点を設けています。
機械だけでなくソフトウェアも独自で開発していて、加工プログラムの支援ソフトがあるなどのサポートが充実しています。
主力製品は「KHRシリーズ」で、機械1台で材料を両端加工できる機械です。従来の開先加工機で両端を加工するには、材料を反転させるか、2台並べる必要がありました。しかし「KCRシリーズ」では機械1台の前後に切削刃物を取り付けており、前端と後端の加工を1台に集約しているのが魅力の機械です。
(2)三陸精工株式会社
パイプフェーシングなどの鋼管加工機を開発、販売している企業です。
鋼管の開先加工機は国内で圧倒的なシェアを占め、異形管や大型管など幅広いサイズの加工に対応しています。
主力製品は「YPCV型」で、切断と開先を同時に加工できるのが特徴です。
また鋼管外周の全周を保持するため、鋼管は変形しにくく薄肉鋼管にも対応しているのが魅力の機械です。
(3)フコク株式会社
小型の開先加工機やバキュームリフトを開発、販売している企業です。
フコク社の開先加工機は平板と鋼管に対応していて、自走式のコンパクトな開先加工機です。
主力製品は「BCM-mini2型(小型)」で、卓上に設置できるほどコンパクトです。
適合板厚は、6~10mm程度と小型のFA装置で多く使用されるサイズに対応しているのが魅力の機械です。
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