検査機器の法定耐用年数と聞くと、「耐用年数分だけ検査機器を使える」というような間違った解釈をする人は少なくありません。実は耐用年数は機械の寿命や使用推奨期間ではなく、会計上や税務上で登場する概念です。
当記事では法定耐用年数の概要や機械寿命の違い、検査機器を長く使うためのコツなどを解説します。
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1.耐用年数って何?機器の寿命との違いについて
耐用年数とは、正式には法定耐用年数といいます。耐用年数と聞くと「年数以上に使用すると破損するのでは?」という基準に思われがちですが、これは正確な意味ではありません。
以下では耐用年数の正式な意味や、機器の寿命との違いについて解説します。
(1)耐用年数は会計上・税務上の減価償却を行うための基準
耐用年数は実務上の機器の寿命ではなく、「会計上や税務上でその資産(設備や機械のこと)がいつまで使えるのか」を表す数値です。減価償却を行う際の基準になります。
以下では減価償却や耐用年数について詳しく解説します。とはいえ減価償却の概念は少しややこしいので、「耐用年数は機械の寿命とは別の意味」とだけ覚えるのみでも問題ありません。
いち早く検査機器の耐用年数を知りたい場合は、「検査機器ならび製造関係機器の法定耐用年数」までお進みください。
①減価償却と耐用年数について
500万円の設備を導入した例を用いて、減価償却と耐用年数について解説します。
まず500万円の設備を導入すると、会計上は500万円分の固定資産として扱います。
しかしこの500万円の設備は、実際のところ生産活動や経年劣化によって少しずつ価値が減少していくはずです。「新品の車の価値が、使っていくうちに下がる」というイメージが近くなります。
つまり2年目以降も延々と「500万円分の価値がある設備」として会計上扱うのは、資産管理の上であまり正確とはいえません。
また会計には「費用収益対応の原則」として「収益に対する費用は事業年度内で対応させる」という決まりがあります。
もし「購入した1年目に上げた利益」と「購入費である500万円すべて」を対応させると、2年目以降に稼働するこの設備は「資産価値ゼロから利益を出している」という扱いになり、正確な会計ではなくなります。とはいえ、また次の年も500万円分の費用として計算するのも正しくありません。
そこで登場するのが減価償却です。
減価償却の考え方は「複数年継続的に売上に貢献する固定資産は一旦資産として計上し、その後少しずつ費用として処理する」というものです。
この「減価償却として処理した1年分の費用(減価償却費)」と「1年分の収益」を毎年対応させることで、費用収益対応の原則にしたがった会計になります。
では、毎年どれくらい金額を減価償却すればよいのでしょうか。この減価償却費の計算に使用するのが耐用年数です。耐用年数とは「会計上で設定された『資産を使用できる年数』」を表し、長期的に使用する固定資産の経済的価値の減少についての会計処理を可能にします。
例えばこの設備の耐用年数が5年だとすると、500万円÷5年=100万円/年と計算し、毎年100万年ずつ資産価値を減少させていきます。ざっくり表すと2年目は400万円、3年目は300万円にします(正確には定額法や定率法などの計算方法あるがここでは省略)。
このように耐用年数は、あくまで会計上や税務上で固定資産を処理するために使用する基準です。実際の「機械や設備の耐久年数」ではないので注意しましょう。
②耐用年数の概要
こちらも少しややこしいのですが、耐用年数の扱いは会計上と税法上で微妙に異なります。ただし基本的には税法上の耐用年数に合わせて処理するため、税法上の扱いのみ頭に入れておきましょう。
税務上の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって数値が定められています。「電気設備は6年」「総トン数が500トン以上の漁船は12年」など、どんな資産でも当てはめられるよう、非常に数多く設定されています。
耐用年数の数値は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の次の別表を見ることで確認可能です。
- 別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表
- 別表第二 機械及び装置の耐用年数表
- 別表第三 無形減価償却資産の耐用年数表
- 別表第四 生物の耐用年数表
- 別表第五 公害防止用減価償却資産の耐用年数表
- 別表第六 開発研究用減価償却資産の耐用年数表
続いて会計上の耐用年数とは、国が使用実態を踏まえつつ、生み出されるであろうサービスや製品を基軸に設定したものです。
設備の耐用年数はあくまで「モノの年数」が基本であり、「モノの年数」を求めるためにそれぞれの機械及び装置の資産区分の判定を行うものであることから、基本的には法人の業種で判定するのではなく、その設備がいずれの業種用の設備に該当するかということによって判定することになる。本通達では、その点について更に、各法人の設備の使用状況等からいずれの業種用の設備として通常使用しているかにより判定するということを念のため明らかにしている。 (引用:国税庁:第三 耐用年数の適用等に関する取扱通達関係) |
つまり同じ機械や設備であっても、会計上の耐用年数は使用する仕事の業種や製造品の種類によって数値が変化します。
(2)耐用年数は寿命ではなく製品・環境・使い方次第
結局のところ、検査機器やそのほか機械設備などの寿命は、耐用年数ではなく製品の素材や使用する環境、機器の使い方に左右されます。
もちろん耐用年数を超えて使用したとしても、法律上なんの問題もありません。むしろ税法上で経費申請しやすくなり、節税につながる可能性もあります。
税に関係なくても、できる限り長く使用することは、現場の経費削減やメンテナンス意識の向上に役に立つはずです。
とはいえ、あまり長く使用し続けるのも危険です。
耐用年数はある程度使用実態に沿って決められています。例えば「この道具なら6年使えるな」と国が決めたものを10年以上使うとなると、不調や故障につながりなりそうだと、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。検査機器もこの点は同じです。
検査機器の不調や劣化によるデメリットを見ていきましょう。
- 検査の品質が落ちて粗悪品や未完成品まで流してしまう
- 機械トラブルや事故につながる
- 頻繁な部品交換やメンテナンスにかかる人件費などのコストがかかる など
検査機器は、製品の品質や各種テストの数値に直接かかわる重要なものです。精度を落としてまで長期間使用するメリットはありません。
そういった意味では、耐用年数を1つの目安とするのもよいかもしれません。
2.検査機器ならび製造関係機器の法定耐用年数
検査機器や製造関係機器の法定耐用年数は、「別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」や「別表第二 機械及び装置の耐用年数表」にて定められています。
ここからは実際に、検査機器やそのほかの製造関係機器の法定耐用年数についてご紹介します。
(1)測定工具や検査工具の法定耐用年数(検査機器)
検査機器は測定工具や検査工具の法定耐用年数に当てはまります。具体的には5年です。
以下では、国税庁が公表する測定工具や検査工具をご紹介します。
ブロックゲージ、基準巻尺、ダイヤルゲージ、粗さ測定器、硬度計、マイクロメーター、限界ゲージ、温度計、圧力計、回転計、ノギス、水準器、小型トランシット、スコヤー、V型ブロック、オシロスコープ、電圧計、電力計、信号発生器、周波数測定器、抵抗測定器、インピーダンス測定器その他測定又は検査に使用するもので、主として生産工程(製品の検査等を含む。)で使用する可搬式 (引用:国税庁:第6節 工具) |
ちなみに、製造現場で使用する治具や取付工具の耐用年数は3年となっています。
(2)医療機器(光学検査機器)の法定耐用年数
医療機器のカテゴライズの中にある、光学検査機器の法定耐用年数は8年です。他の検査機器と違い、少し長めに設定されています。
(3)製造機器系の法定耐用年数
製造機器系や設備の法定耐用年数は以下のとおりです。
減価償却資産の名称 | 耐用年数 |
プレス加工用などの鍛圧工具および金属加工用の工具 | 2年 |
切削工具 | 2年 |
金属圧ロール(鋼鉄圧延ロールなど) | 4年 |
食料品製造業用設備 | 10年 |
飲料、たばこ又は飼料製造業用設備 | 10年 |
木材又は木製品(家具を除く)製造用設備 | 8年 |
化学工業用設備 | 5年 |
鉄鋼業用設備 | 5~14年 |
金属製品製造業用設備 | 6年または10年 |
非鉄金属製造業用設備 | 7年または11年 |
生産用機械器具 | 9年または12年 |
業務用機械器具 | 7年 |
電気機械器具製造業用設備 | 7年 |
上記のほかにも、業種や建物の種類によってさまざまな製造機器の法定耐用年数が定められています。
(4)建物付属設備の法定耐用年数
製造現場では欠かせない建物附属設備にも、法定耐用年数が定められています。主なものを見ていきましょう。
減価償却資産の名称 | 耐用年数 |
電気設備 | 6年または15年 |
給排水又は衛生設備及びガス設備 | 15年 |
冷房、暖房、通風又はボイラー設備 | 13年または15年 |
昇降機設備(エレベーター) | 17年 |
昇降機設備(エスカレーター) | 15年 |
給排水又は衛生設備及びガス設備 | 15年 |
消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備 | 8年 |
エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備 | 12年 |
(5)そのほか事務用品関係の法定耐用年数
事務所の事務用具やそのほか設備にも、それぞれ法定耐用年数が設定されています。
減価償却資産としての分類は「家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品(他の項に掲げるものを除く。)」や「事務機器及び通信機器」などです。
減価償却資産の細目 | 耐用年数 |
事務机、事務いす及びキャビネット | 4年 |
冷凍機付又は冷蔵機付のもの | 6年 |
冷房用又は暖房用機器 | 6年 |
パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。) | 4年 |
電話設備その他の通信機器 | 6年 |
カーテン、座ぶとん、寝具、丹前その他これらに類する繊維製品 | 3年 |
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器 | 6年 |
3.検査機器の寿命と向き合うには?長く使うコツ
耐用年数に限らず、検査機器の寿命はいつか訪れるものです。ここからは検査機器の寿命との向き合い方や、できるだけ精度を保ったまま長く使うコツについて解説します。
(1)老朽化の原因を知っておく
検査機器の修理対応やメンテナンスも大事ですが、まずは製造現場において「何が検査機器に悪影響を及ぼすのか」「老朽化を早める原因な何なのか」について調べておくことが大切です。
もし製造現場の問題点の洗い出しや改善を行わずに進めてしまうと、何度新しい検査機器を導入したところですぐに故障してしまいます。
まずは検査機器が正常に動作し、老朽化が進まない環境を整えましょう。例えば次のチェック項目が考えられます。
- 騒音や振動など検査機器本体に悪影響を及ぼす環境でないか
- 検査機器の規格に合わない部品を無理やり代用していないか
- 生産ラインを流れてくる製造品と検査機器が直接触れていないか
- 作業員の身体が頻繁に触れる場所でないか
- 人間の手が届きにくい場所に設置され、メンテナンスが疎かになっていないか など
(2)装置の定期的な保全活動を行う
検査機器の寿命を減らさないためには、装置の定期的な保全活動が非常に効果的です。保全活動には「事後保全」と「予防保全」が存在しますが、検査機器の寿命に関しては故障する前に対処する予防保全が重要になります。
予防保全を行うメリットは次のとおりです。
- 部品の劣化や不調による突発的な故障が減る
- 不具合の積み重ねによる重大な故障ならびに修理不能な故障になるのを防げる
- 生産が安定し、頻繁な機械の停止(チョコ停)による機械の急激なオンオフが防げる
上記の積み重ねが、結果的に検査機器の寿命を無駄に減らさないことにつながります。
定期的な保全活動として、次の方法が考えられます。
- 1ヶ月や3ヶ月毎など、期間で区切ってメンテナンスや部品交換を行う
- 検査機器の精度誤差などから状態を判断し、決められた基準以上になったらメンテナンスを行う
- カメラレンズの部分やセンサの部分を定期的に清掃する など
(3)機械異常を早期発見できるシステムを構築する
人間の手によるメンテナンスや目視による判断なども効果的ですが、作業員はほかの業務をこなす必要があり、24時間つきっきりで監視するわけにもいきません。
そこで検査機器ならびにほかの機械設備を一括で監視できるシステムの導入もおすすめです。例えば次のようなシステムが考えられます。
- モニタリングシステムを導入する
- 騒音監視システムを導入する
- 機械エラー時にアラームやランプが動作するように設定する など
(4)無理だと思ったら早めに新しい検査機器に交換する
検査機器の検査品質が落ちると、最悪の場合、製造品すべてを検品する必要が出たり、製造品の回収騒ぎになったりと、大幅な時間・金銭的ロスや信頼低下につながるかもしれません。それほど検査機器は重要な役割を担っています。
もし少しでも精度が落ちたと感じたり、分解点検や部品交換時に本体を触ることで逆に悪影響が出たりする状況であれば、思い切って新しい検査機器と早めに交換することをおすすめします。
4.AIやIoTを利用した「予備保全システム」について
AIやIoT技術が進歩していく中、これらの技術を用いた「予備保全システム」に注目が集まっています。
これは生産ラインにある機械設備の作動状況や製造品のエラーなどのあらゆるデータを、IoTの技術を用いて収集し、蓄積したデータについてAIによるディープラーニングや解析を行い、機械自身が故障の予兆や不具合を事前に察知できるようにするシステムです。
機械による24時間監視や、膨大なビッグデータから導き出される最適なメンテナンス・部品交換の時期の割り出しなどが期待されています。
2021年現在では機械設備単体だけでなく、生産ライン全体や工場すべてのレベルでの予備保全システムが活用できるような研究も進行しています。
今後は予備保全システムによって、検査機器やそのほかの機械設備がより長期間使えるようになるかもしれません。
5.製造業のWebマーケティングに関するご相談は株式会社ストラーツへ
検査機器ならび生産ラインで使用する機械設備は、機械の寿命を超えた使用やメンテナンス不良が続いたまま使い続けると、機械自体の故障や製造品の品質低下につながりかねません。
早め早めに設備のリプレースを検討することがポイントです。
株式会社ストラーツでは、問合せにつなげる製造業ウェブサイトや記事の制作・納品までを行っています。
ウェブサイトや記事は広告と異なり、一度制作した後は、コストをかけなくても問合せ・リード獲得をし続けるという点が大きなメリット。
また、ストラーツには製造業の技術部門経験を持つライターが多数所属しており、高い専門性とSEOを両立しています。
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