「BtoB」の事業形態が多い製造業では、対消費者を対象とした「BtoC」の一般的なサービス業界に比べて、マーケティングの戦略や重要性が大きく異なります。自社の市場を把握した上で、変化の激しい業界で製品開発から販路の構築や拡大が重要なだけでなく、見込み顧客の発掘や継続的なリーチも必要となります。
ここでは、製造業のマーケティングにおける成功例や課題、製造業マーケティングに関わるマーケティング用語や基本的なステップについて解説します。
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1.製造業マーケティングとは
最初に、製造業のマーケティングとは何か、一体何をするのかなどを、各用語の定義を見ながら確認していきましょう。
(1)そもそもマーケティングとは何なのか
マーケティングとは、製品・サービスなどを販売する立場である「売り手」が、取り扱う商品の「価格」を設定して、「買い手」に売るための一連の手法や考え方を指す言葉です。
マーケティングにおいて大事なのは、「売り手」が利益を得ることです。利益を得続けなければ、製品やサービスを提供し続けることはできません。
マーケティング戦略として、最初に顧客の満足を満たすことでサービスの価値を向上させることも大事です。ただ、「売るもの」を作り出す仕組みを作り、「売り手」だけでなく「買い手」が利益を得るための価値も創り出すことが重要になります。
(2)製造業マーケティングとは
製造業におけるマーケティングとは、製品を開発・製造して、顧客に安定的に販売し続け、利益を確保し続けるための方法を考えることです。つまり、製造業における基本である「QCD」を守りながら、利益を生み出すことを目的とします。
Q(Quality):品質
C(Cost):コスト
D(Delivery):納期
これら3つはトレードオフの関係にあるため、自社にとってのバランスを取りながら利益を生み出さなければなりません。
(3)製造業マーケティングに関わる手法と用語
製造業のマーケティングには、さまざまな手法や用語があります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
①技術マーケティング
技術マーケティングとは、ユーザにとっての便益を考慮した上で、自社のコア技術を活かしたイノベーティブな製品を開発・商品化して、競争優位性を確保してビジネスを発展させるためのマーケティング手法です。
経営企画や営業などだけでなく、研究・開発者もマーケティングに関わることで、顧客の期待する真の価値を見出した上で、製品を生み出すことを目的としています。
なお、製造業の技術マーケティングに関しては、下記で詳しくご紹介しています。
⇒技術マーケティングとは何か?戦略策定のポイントと3つの成功事例
②デジタルマーケティング
デジタルマーケティングとは、ECサイト上での消費行動データや、イベント開催などで得られる来場者数やアンケート結果など、さまざまなデジタルデータを活用して販売につなげるマーケティング手法です。
Webサイトだけに限らず、スマホアプリや商品自体から収集できるユーザ行動履歴データなども活用するため、インターネット前提のWebマーケティングよりも幅広い分析を行って戦略を構築します。
③Webマーケティング
Webマーケティングは、インターネットを利用して見込み顧客への製品やサービスを販売する仕組みを作ることです。
Webマーケティングの最大のメリットは、地域に縛られることなく情報を伝えられるため、リーチ数が多い点があげられます。また、Webマーケティングに必須とも言えるWebサイト構築などは、比較的低コストで実施でき、アクセス数や成約数などを数値化しやすいという利点もあります。
製造業のWebマーケティングについては、下記記事に詳しくまとめました。
⇒製造業Webマーケティングを一から解説!手法の比較やコツ、注意点
④営業
営業は、マーケティングにおいて、見込み顧客にアプローチして取引活動を行うという役割を持っています。
見込み顧客への直接訪問による「フィールドセールス」や、Eメールや電話などで顧客とコミュニケーションを取る「インサイドセールス」があります。
製造業向けの営業方法やポイントについては、下記をご覧ください。
⇒製造業の営業が今重要な理由 よくある課題や解決のコツも含めて解説
2.製造業マーケティングにおける課題と成功事例
続いて、製造業のマーケティングにおける課題と成功事例をご紹介します。
(1)製造業マーケティングにおける課題
マーケティング戦略は、事業継続・事業発展を実現する上で重要な考え方です。
しかし、BtoBビジネスが基本の製造メーカならではの課題がいくつかあります。ここでは、代表的なものを3つ、ご紹介します。
①新規開拓営業のハードルが高い
BtoBが主体である製造業では、新規顧客の開拓がそもそも難しいという課題があります。
顧客側は、予算都合で新規設備の導入が難しいだけでなく、現状の設備などの変更によって購入費以上に多大なリスクがかかります。
- 社内での設備変更や導入に関する稟議審査
- 設備の設置と安定稼働までの時間・人的なコスト
- 設備変更によるエンドユーザへの4M変更申請
そのため、単純に既存設備よりも低価格などという理由だけでは、容易に設備変更ができないのが実状です。同様に、自社である程度実績があるメーカの商品しか扱いにくいという理由もあります。
②ソリューション営業が商品紹介になっている
製造業における営業活動でも、顧客の悩みや課題を明確にして改善案を提案する「ソリューション営業」は一般的な方法です。ただ、最終的な提案が商品の説明に終始することも少なくありません。
顧客の悩みに対して対応できる範囲が、自社製品でできる領域に限られる場合が多く、結果として既存製品の紹介が多くなってしまいます。
③デジタルマーケティングが難しい一面がある
マーケティングを行う上では、自社の製品はもちろん、自社自身の認知度を高めることが重要です。ただ、「BtoB」が基本の製造業では、顧客側も技術者であることが多く、インターネットでの情報収集者が個人向けサービスなどと比較して少ないという現場があります。
また、見込み顧客が欲しい技術的な解決法などを一般公開することが難しい一面もあり、提供するデジタルコンテンツの取捨選択が難しいというのも一因として考えられます。
(2)製造業マーケティングの成功事例
製造業のマーケティングにはさまざまな課題がありますが、一方で、自社にとっての「QCD」を明確にしながら成功させてきた事例も多くあります。製造業は、対企業を対象とした「BtoBビジネス」が多いのですが、個人を対象とした「BtoCビジネス」の視点での成功例もあります。
ここでは、製造業におけるマーケティングの成功例をいくつか紹介します。
①株式会社島津製作所│BtoBの視点
日本の分析・計測機器大手の島津製作所では、エンドユーザへのアプローチによって販路を拡大しています。本社工場には、分析機器ショールーム「Science Plaza」を備えており、見込み顧客は実際に装置を見ることができます。
②日産自動車株式会社│BtoCの視点
日本の自動車メーカ大手の日産自動車では、顧客への「信頼のドライビングプレジャー」の提供を前提としています。アプリケーションは自動車に徹底的に集中し、コアバリューとして4つの戦略的技術領域を据えています。
研究開発では、「基礎・応用・実用化」の3つの研究フェーズ管理を行っており、実用化研究では成果見積り額を換算することを徹底しています。
③The Procter & Gamble Company(P&G)│BtoCの視点
アメリカの一般消費財メーカのP&Gは、スキンケア用品やベビー用品などの商品実物を消費者に提示しながら調査を実施しています。また、担当者が新製品の開発から収益化、ブランドの構築までを行う「ブランドマネージャ制」を導入しています。
研究開発においては、積極的にM&Aを行うことで技術力の向上を図っています。
製造業のマーケティングでは、このように課題を把握したり、成功事例を見てイメージを掴んだりすることも成功への近道となります。下記では、今回ご紹介しきれなかった課題や成功事例をご紹介しているので、よければあわせてご覧ください。
⇒製造業のマーケティング課題は?4つの解決策や成功例と併せて紹介!
3.製造業におけるマーケティングの基本ステップ
製造業におけるマーケティングでは、3つの重要な要素を前提として活動する必要があります。
(1)顧客に提供する価値の切り口を定める
自社のコア技術を前提とした顧客への提供価値を明確にするためには、顧客・市場の分析が必要です。具体的には、以下のようなフレームワークを用いながら分析を行います。
- 顧客セグメンテーション:自社参入市場の顧客に着目して、ニーズや市場規模、成長性などを分析します。SWOT分析などの自社分析も活用しながら、最終的なターゲット顧客選定の判断材料にします。
- 3C分析:「自社(Company)」「顧客(Customer)」「競合他社(Competitor)」の3つの「C」の要素に関して、それぞの事業規模や提供価値・ニーズなどをまとめることで、自社の事業戦略を明確化します。
(2)競合他社が提供する価値との違いを明確化する
市場にポジションを構築するためには、競合他社との差別化が必要です。そのためには、競合分析を含めて、以下のようなフレームワークを用いて自社の強み分析などが必要となります。
- SWOT分析:内部環境(自社)の「強み」と「弱み」、市場や競合他社などの外部環境の「機会」や「脅威」を抽出します。市場に機会があり、自社に強みがある分野には積極的に拡販を行うなど、今後の事業展開を考えます。
- ポジショニングマップ:自社と競合他社の製品・サービスの評価を顧客目線で判定して2軸チャート上にプロットし、自社の強みや差別化状況を把握します。
(3)提供する価値の実践方法を決める
商品コンセプトなどが決定したら、マーケティング戦略における「4P」をどう組み合わせるかを考えて、実行に移します。製造業における「4P」は、以下のようになります。
- Product(製品):商品の機能やデザイン、調整などの開発戦略
- Price(価格):販売価格やディスカウント対応、支払期間などの価格戦略
- Place(流通):立地や輸送、在庫管理などを含めた流通・販売チャネルの決定
- Promotion(販売促進):製品の販売促進のための広告などのプロモーション戦略
4.製造業マーケティングに役立つツールやコンサル
製造業マーケティングに関しては、マーケティングのオートメーション化ツールや製造業を専門としたマーケティングコンサルサービスなどがあります。ここでは、具体的なサービスをいくつか紹介します。
(1)製造業向けマーケティングオートメーションツール
①Pardot(パードット)
画像引用:株式会社セールスフォース・ドットコムHP
世界的なセールスツールとして有名な「Salesforce.com,Inc.」が提供している、製造業のマーケティングにも対応したMAツールです。
見込み顧客へのリーチの自動化や優先順位づけも可能で、ダッシュボード上でROIの管理も可能なため、単純作業は全てツールに一任して、開発業務などの生産性の高い業務に集中できます。
URL:https://www.salesforce.com/jp/products/pardot/overview/
②SATORI
画像引用:SATORI株式会社HP
2021年2月時点で導入実績1,000社を超えるMAツール。リードのシステム上での一元管理はもちろん、リターゲティング広告による見込み顧客へのアプローチや、Webサイト上での契約成立を促す効果的なCTAの設置なども可能です。
製造業におけるWebマーケティングで発生するwebサイト構築や、デジタルによるインサイドセールス力の向上に役立ちます。
(2)製造業向けマーケティングコンサル
①アドビ株式会社
画像引用:アドビ株式会社HP
「Photoshop」などのクリエイティブ系のアプリツールで有名なアドビ社ですが、マーケティングコンサルも実施しています。自社での豊富なデジタルマーケティングなどの経験を活かして、顧客に合わせたアプリケーションの提供を行っています。
顧客の認知から購入、再購入に至るまでのプロセスを一元的に運用できる「Marketo Engage」は、オープン設計となっており既存システムとの連携も可能というメリットがあります。
URL:https://www.biz.ne.jp/jump/jump_comdata.html?comid=12693
②株式会社アーキテクチャー
画像引用:株式会社アーキテクチャーHP
製造業向けのオウンドメディア設計やマーケティング支援などを行っている株式会社アーキテクチャー。製造業の大半を占めるBtoBビジネスに対応した自社オウンドメディアの構築やWebマーケティングの支援、データ解析による改善方策の立案などのコンサルティングが受けられます。
大手メーカへの取材制作実績も豊富で、顧客の意図をしっかりと形にしてくれます。
URL:http://www.architecture.co.jp/
5.製造業のWebマーケティングに関するご相談は株式会社ストラーツへ
製造業界は、技術革新のスピードが早く、市場の変化も激し具なっています。その中で、自社のコア技術を活かしながらポジションを確保し、見込み顧客の発掘や継続的なリーチが必要となります。
製造業マーケティングでは、「4P」を明確にした上で、コンテンツマーケティングやWebマーケティングなどを効果的に活用していくことが重要となります。
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ウェブサイトや記事は広告と異なり、一度制作した後は、コストをかけなくても問合せ・リード獲得をし続けるという点が大きなメリット。
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