時間分析とは?PTS法などの各手法の解説やコツ、相談先を紹介

製造業が自社の生産性を向上させる上で、「時間」を意識することは極めて重要です。製造業務にかかる時間を最適化することで、生産量の向上、生産リードタイムの短縮、製造コストの削減といった多くのメリットを得ることができます。

今回は、生産性を向上させるために役立つ時間分析の手法について解説していきます。本記事を参考にして、時間分析を自社に取り入れていただければ幸いです。

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1.時間分析とは何か?

(1)インダストリアルエンジニアリング(IE)の概要

インダストリアルエンジニアリング(IE)は、製造現場のムリ・ムラ・ムダを発見して改善することで最適化を行う手法です。1910年代のアメリカの研究者による研究が発端とされており、後に日本にも伝わって普及しました。

インダストリアルエンジニアリングには、「方法研究」「作業測定」「方法研究と作業測定の組み合わせ」という3つの手法があります。本記事のテーマである時間分析は、「作業測定」の1種です。

(2)時間分析とは?

時間分析は、ある工程で行われる作業をより細かいステップに分けた上で、各ステップにかかる時間を測定し分析する手法です。「時間研究」や「タイムスタディ」と呼ばれることもあります。

時間という観点から作業を分析することで、作業方法や作業条件、作業環境におけるムダ・ムラ・ムダを発見し改善していきます。

時間分析における基本的な流れを紹介します。

①対象となる工程を設定して、測定可能なステップに分ける

まずは、どの工程に対して時間分析を行うかを設定します。そして、測定や分析がしやすいように、その工程で行っている作業を細かいステップに分けていきます。この時、あまりにも細かくしてしまうと時間の測定ができなくなる場合があるため、注意が必要です。

細かいステップに分けていく過程で、工程内でどのような作業が行われているかを洗い出すこともできます。作業者ごとに若干異なる場合もあるので、複数の作業者にヒアリングをして標準的な作業内容をまとめるようにしましょう。

②時間を測定する

それぞれのステップにかかっている時間を直接測ったり、推測することで時間を測定していきます。時間の測定方法にはいくつか種類があり、後で詳しく解説していきます。

時間を測定することで、標準時間を設定できるようになります。工程全体や作業ごとの標準時間が設定されていれば、生産性を判断する基準ができて改善もしやすくなります。

③分析によって問題点や改善点を見つけ出す

各ステップでの時間を測定した後は、分析によって問題点や改善点を見つけ出します。作業方法にムダがないか、作業手順書の見直しができないか、作業環境を変えることで時間を短縮できないか、といった観点で細かく分析していきましょう。

細かいステップに分けていることで、特に時間がかかっている部分がどこなのかが明確になります。その部分に注目して改善することで、生産性を向上させることができます。

(3)時間分析によるメリット

時間分析を正しく行って問題点や改善点を発見・改善することによって、製造現場は次のようなメリットを得ることができます。

  • ムダな作業の削減や時間短縮によって生産リードタイムを短縮できる
  • 作業者ごとの作業時間のバラツキを削減できる
  • 各工程での工数削減によってコストダウンや省人化ができる
  • 標準時間ができることで作業者の意識が向上する
  • 改善効果を測定しやすくなり、作業者の仕事の評価ができるようになる

2.時間分析の種類

時間分析の主な手法として、ストップウォッチ法とPTS法があります。それぞれどのような手法なのかみてみましょう。

(1)ストップウォッチ法

ストップウォッチ法は、その名の通りストップウォッチを使って実際に作業をしている時間を計測する手法です。近年では、スマートフォンのストップウォッチ機能を使って行うことが増えています。

ストップウォッチ法では、事前に工程内の作業を細かく分けて一覧表にしておきます。その後、実際に作業をしている現場に行って作業の開始から終了までの時間を計測し、一覧表に記録していくのが一般的な流れです。

一度だけ計測するのではなく、複数回計測して標準時間を出すことが重要です。また、作業者ごとのバラツキを考慮して、複数の作業者で時間を計測すればより正確な測定結果を得ることができるでしょう。

ストップウォッチ法は、考え方がシンプルですぐに実施できるので、時間分析における基本的な手法だといえます。一方で、新設する製造ラインなどで実際に作業がされていない場合は使用できません。その場合は、次に紹介するPTS法を使って時間分析を行います。

(2)PTS法(Predetermined Time Standard System)

PTS法は、工程内で行われる作業をより細かい人間の動作単位に分解して、あらかじめ決められた動作ごとの標準時間を当てはめることで所要時間を推測する手法です。

ストップウォッチ法に比べると分析手順が複雑でノウハウが必要になりますが、実際に作業する前に分析ができることや、誰が行っても安定した分析結果を得ることができます。

PTS法はさらに2つの手法に分かれています。詳しくみていきましょう。

①WF法(Work-Factor Plan)

WF法は、4つの要素から人の動作時間を設定する手法です。次の4つの要素の変化によって、動作の標準時間を決めています。

  1. 使用する身体部位(指、手、腕、足など)
  2. 動作距離
  3. 取り扱う重量または抵抗
  4. 人為的調整(停止、注意、方向調整、方向変更)

例えば、WF法によると腕を13インチ(約33cm)伸ばすのにかかる標準時間は0.0067分(約0.38秒)と設定されています。もし、手に重いものを持っていたり、間に障害物があれば時間が伸びることになります。

WF法は上述した4つの要素以外にも細かいルールが多数あり、それに沿って動作時間を決定していきます。WF法で正しい分析を行うためにはノウハウの蓄積と慣れが必要であり、容易に取り入れられる手法ではありませんが、使いこなせればストップウォッチ法よりも短時間かつ正確に時間を推測することができます。

②MTM法(Methods-Time Measurement)

MTM法は、基本動作を10の種類に分けており、動作の種類と動作距離によって動作時間を設定する手法です。動作の種類ごとにいくつかのケースが設定されており、それらも組み合わせて動作時間を導き出します。基本動作の種類と分類文字は以下の通りです。

  1. 手をのばす(R)
  2. 運ぶ・動かす(M)
  3. 回す(T)
  4. 押す(AP)
  5. つかむ(G)
  6. 定置する・組み立てる(P)
  7. 放す(PL)
  8. 引き離す・分解する(D)
  9. 目の移動(ET)
  10. 目の焦点合わせ(EF)

手を10インチ(約25cm)のばす動作を例にして、MTM法の動作時間をみてみましょう。手をのばす動作のケース別に標準動作時間をまとめています。

確定した位置にある物に手をのばす0.0052分(約0.31秒)
作業を繰り返すたびにわずかに位置が変わるものに手をのばす0.0060分(約0.36秒)
乱雑に群れをなしていたり、探したりするものに手をのばす0.0077分(約0.46秒)
非常に小さいものに手をのばす0.0077分(約0.46秒)
身体の釣り合いをとるためなど、漠然とした方向に手をのばす0.0063分(約0.39秒)

3.時間分析をスムーズに行うコツと注意点

(1)動画を活用する

時間分析の手法としてストップウォッチ法とPTS法を紹介しましたが、PTS法を実施するたえめにはノウハウが必要なため、ストップウォッチ法から取り入れてみるケースが多いのではないかと思います。

ただし、ストップウォッチ法は目視で行うため、細かい動きを追いきれなかったり、同じ動きを繰り返し確認できないというデメリットがあります。

これらのデメリットを解消する手段として有効なのが、動画の活用です。作業風景を動画で撮影してそれを見ながら時間の測定や分析を行うことことで、次のようなメリットがあります。ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • スロー再生、一時停止、繰り返し再生などをすることで作業の流れを正確に把握できる
  • 何度も繰り返し見ることによって分析の精度が高くなる
  • 複数人で動画を見ながら議論を交わすことができる

(2)実態に合った時間分析を行う

正しい分析結果を出すためには、実態に合った時間分析を行うことが重要です。実際の作業風景を確認したり、作業者にヒアリングしながら時間分析を行うことを意識しましょう。

特にPTS法の場合は机上で時間の測定を行うため、実態との乖離が起きやすい傾向にあります。まだ実際に作業を行っていない状況であれば、PTS法で標準的な作業時間を推測することは有効です。しかし、作業が行われるようになったらストップウォッチ法によって実際の作業時間を測定するといったように、上手く組み合わせることで正しい時間分析を行えます。

(3)分析と改善をセットで行う

時間分析は手間がかかります。せっかく時間分析で問題点や改善点を見つけることができても、改善する行動が伴わなければ時間分析にかけた工数がムダになってしまいます。必ず分析と改善はセットで行うようにしましょう。

また、作業にかかる時間は作業者や作業環境が変われば大きく変化するものです。時間分析は一度だけで終わらせず、定期的に実施することをおすすめします。

4.IEを進める上でおすすめの相談先

最後に、インダストリアルエンジニアリングを進める上で、おすすめの相談先として、日本インダストリアル・エンジニアリング協会をご紹介します。

日本インダストリアル・エンジニアリング協会は、日本におけるIEの啓発と普及、推進を目的として設立された中立・非営利な団体です。インダストリアル・エンジニアリングの教育訓練活動や研究活動、情報提供などを行っており、日本産業の生産性向上と経営合理化に貢献しています。

  • 住所:東京都千代田区平河町2-13-12 (公財)日本生産性本部内
  • TEL:03-3511-4062(代表)
  • URL:https://www.j-ie.com/

5.製造業のWebマーケティングに関するご相談は株式会社ストラーツ

本記事では、時間分析の概要や具体的な手法、時間分析をスムーズに行うためのコツや注意点ついて解説しました。

時間分析は製造業にとっては定番ともいえる手法のため、実施したことがあるという企業も多いと思います。製造業の生産性向上が課題となっている今、改めて時間分析を実施して自社の現状を見直してみてはいかがでしょうか。

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また、ストラーツには製造業の技術部門経験を持つライターが多数所属しており、高い専門性とSEOを両立しています。

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