ガス溶接はアーク溶接と並んでよく名前が挙がる溶接方法ですが、アーク溶接とは原理も特徴もまったく違います。
ガス溶接は電気を使用せず、ガスの燃焼熱を利用して金属を溶かす溶接方法です。しかし、「アーク溶接と具体的にどう違うのか」がいまいち想像できず、疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。
当記事ではガス溶接の原理や特徴、ガス溶接作業における注意点、ガス溶接機の構造などについて解説します。
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1.ガス溶接とは?溶接の原理やアーク溶接との違いを解説
ガス溶接は熱源をガスとしたり、溶接機の構造がシンプルだったりとアーク溶接と大きな違いが見られます。まずはガス溶接の原理や構造、アーク溶接との違いについて見ていきましょう。
(1)ガス溶接の原理・仕組み
ガス溶接は、可燃性ガスを燃焼させて得た高温の炎を熱源とし、金属を溶融させて溶接を行う技術です。
もっとも一般的なガス溶接は「アセチレンガス」と「酸素」を混合してガスを燃焼させるタイプになります。アセチレンガスのほかには、プロパン・エチレン・水素・都市ガスなどが使用されます。
大体のイメージ図は次のとおりです。
まず2つの気体の量を微調整しつつ、トーチから噴出したガスに専用のライターで点火します。その後は炎をワークに当てて溶かし、溶接作業を進めていきます。
アセチレンガスと酸素を混合した場合がもっとも温度が高く、約3,000~3,500℃です。圧力数値は一般的に、酸素0.2~0.3MPa、可燃性ガス0.02~0.03MPaとされます。
アーク放電を利用したアーク溶接や、励振や集光などの技術が必要なレーザ溶接と比べると、非常にシンプルな原理・仕組みといえるでしょう。
ただし可燃性ガスという危険度が高い気体を使用するため、溶接作業前の安全点検は必ず行わなければなりません。従業員の安全教育は必須です。
ちなみにガス溶接の原理は、金属の切断加工にも応用できます。炎の熱を当て続けた後に酸素を吹き付け、酸化・溶融させた金属を吹き飛ばすとガス切断(ガス溶断)になります。鉄を熱する⇒鉄が溶ける⇒溶けた鉄を酸素気流で吹き飛ばす、というプロセスがガス切断機の原理です。
(2)ガス溶接業務に必要な資格はある?
ガス溶接の作業は、労働安全衛生法施行令第20条第10号に定められている「可燃性ガスおよび酸素を用いて行う金属の溶接、溶断または加熱の業務に当てはまります。
十 可燃性ガス及び酸素を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の業務 (引用:労働安全衛生法施行令) |
ガス溶接の業務に従事させるには、ガス溶接技能講習(13時間)を修了し、ガス溶接作業の資格を得た者でなければなりません。
実際にガス溶接の無資格者による作業によって、死亡事故が起きた実例が存在します。必ず技能講習を受講して作業に従事させましょう。
ガス溶接技能講習を実施しているのは、登録教習機関となっている次の場所です。
- 職業訓練学校
- 一般社団法人 労働技能講習協会
- コベルコ教習所
- コマツ教習所 など
また、ガス溶接に関係する技術の証明や管理者としての資格には次のようなものがあります
- ガス溶接作業主任者
- ガス溶接技能者 など
(3)アーク溶接との違いって何?
アーク溶接は空気の放電現象の一種である「アーク放電」を利用した溶接方法です。熱を利用して金属を溶融させる点は同じですが、電気熱を利用する点でアーク溶接とガス溶接は原理が根本的に違います。
アーク溶接はガス溶接に比べると、溶接温度が5,000~20,000度と非常に高温です。そのため、アークのほうが深い溶け込みと速度の速い溶接が可能になります。
ただしアーク溶接はアースの位置や感電に注意しなければなりません。また熱が強すぎることから、薄板の溶接に関してはガス溶接のほうが向いています。
2.ガス溶接の特徴は?メリットとデメリットまとめ
ここからはガス溶接の特徴から見る、メリットやデメリットについて解説します。
(1)ガス溶接のメリット
ガス溶接のメリットは次のとおりです。
- 溶接不良といった失敗を防ぎやすい
- 薄板の溶接がやりやすい
- 電気を使わずに溶接できる
具体的に見ていきましょう。
①溶接不良といった失敗を防ぎやすい
アーク溶接と比べて溶接速度が遅い分、ガス溶接は溶接部を都度確認しやすくなっています。またアーク溶接のような火花が飛び散らない点もガス溶接ならではの特徴です。
さらにガス溶接はガスの供給量を簡単に調節可能であり、加熱量のコントロールが容易に行えます。
上記の理由からガス溶接はワークの状態を確認しやすいため、溶接不良や溶接欠陥が発生しにくいという大きなメリットがあります。
②薄板の溶接がやりやすい
アーク溶接は高温であるがゆえに薄板の加工が難しい面がありますが、ガス溶接は溶接時の温度が低い分、薄板の溶接でもワークに穴を開けたり、必要以上に溶かしたりなどの不良が発生しにくいというメリットがあります。
③電気を使わずに溶接ができる
ガス溶接は電気エネルギーを使用しない溶接であるため、電源を引っ張れない場所やアースが取れない場所でも溶接を行えます。また溶接機が原因の感電事故が発生しない点も、アーク溶接にはない特徴です。
(2)ガス溶接のデメリット
続いて、ガス溶接のデメリットをご紹介します。
- 作業効率がアークより劣る
- 厚板の溶接には向いていない
- アセチレンガスならびに可燃性ガスの取り扱いが難しい
詳細を見ていきましょう。
①作業効率がアークより劣る
ガス溶接は溶接温度が低い分、金属の溶け込みに時間がかかります。溶接速度も遅く、作業時間もアーク溶接に比べて長くなるため、生産効率がよい溶接方法とはいえません。
また溶接不良・溶接欠陥を防ぎやすい反面、ガス溶接は炎の熱がワーク全体に広がりやすいことから、ワークの変形やひずみが起きやすいデメリットもあります。エネルギーを局地的かつ集中的にかけられるアーク溶接のほうが、一般的には作業効率ならびに生産性がよいといえるでしょう。
②厚板の溶接には向いていない
溶接温度が低めであるガス溶接は、薄板の溶接が得意な反面、厚板の溶接には向いていません。前述のとおり金属の溶け込みに時間がかかることから、長時間の作業時間が必要になります。
③アセチレンガスならびに可燃性ガスの取り扱いが難しい
ガス溶接で使用されるアセチレンガスおよびそのほかの可燃性ガスは危険物です。取り扱い方法を間違えてしまうと、火災や爆発などの大きな事故の原因になります。ガスの保存に関しても、作業場の住所を所轄する消防署への届出や、防災・防火措置を施した取り扱い・保管などの措置が必要です。
そもそも危険性の高さがあるからこそ、ガス溶接は技能講習修了者しか行ってはならないと定められています。ガス関係の取り扱いや保管については、細心の注意が必要です。
3.ガス溶接作業を行う際の注意点まとめ
ガス溶接作業は、ガスの取り扱いや作業環境についてしっかり点検してから行いましょう。とくに可燃性ガスに関する扱いを怠ると、大きな事故につながる可能性があります。
以下ではガス溶接作業に関する注意点をまとめました。
(1)保護具を必ず準備・着装する
ガス溶接作業は炎やガス、金属などを取り扱うため、身体を守るために次の保護具を準備・着装しなければなりません。
- 防火性能が高い作業服
- 安全帽(ヘルメット)
- 保護メガネ
- 溶接面
- 革手袋
- 安全靴 など
保護具なしでの作業は命にかかわる重大な事故の原因になります。指導者ならびに作業者への安全教育にて徹底周知を行いましょう。
(2)作業の前後でガス溶接機ならび周囲の環境を点検する
可燃性ガスを使用するガス溶接作業では、作業前後の確認や作業中の環境チェックを行い、安全性を確保してから作業しなければなりません。最低限、次の項目について点検を行います。
- 使用するガスやトーチの状態は適正か
- 装置の動作や設備そのものに異常はないか
- 作業場の風通しは問題ないのか
- 作業場の温度は40度以下に保たれているのか
- 作業場の周囲5メートル以内に引火性または発火性のものを置いていないか
- ガスと酸素の元栓管理や開閉順番は適切か
- ガスボンベの開閉は静かに行っているか
- 作業前後でガス漏れは発生していないのか
- ガス圧力は適正値か
- 作業終了後にガスを正しく保管できているか など
上記に記載した以外にも、作業現場の場所や広さ、作業工程の内容によってチェックすべき点が職場ごとに潜んでいるはずです。安全点検やリスクアセスメントを駆使し、事前に問題点を洗い出しておきましょう。
厚生労働省では「溶接作業におけるリスクアセスメントのすすめ方」を公式サイトにて公表しています。ぜひ参考にしてください。
(3)ガスの保管方法には十分に注意する
可燃性ガスおよび酸素ガスの取り扱いには十分に注意し、正しく保管しましょう。ガスの保管の際には次の点について注意が必要です。
- 保管所の換気や通風に問題はないか
- 引火性または発火性あるものを置いていないか
- ガス容器の温度を40度以下に保てる環境であるか
- ガス容器が転倒しないような措置を講じているか
- 逆火防止装置を設けているか
- 保管場所には「火気厳禁」や「アセチレンガスの保管」などの標識を掲示しているか など
とくによく使用されるアセチレンガスは、少しの衝撃を加えるだけで爆発する可能性がある危険なガスです。作業中だけでなく、ガスの保管にも気を配る必要があります。
4.ガス溶接機の構造
ここで、ガス溶接に用いるガス溶接機の構造をご紹介しましょう。溶接機を導入するときに知っておくと、メーカとの話もスムーズになります。
(1)可燃性ガスボンベ・酸素ボンベ
ガス溶接の熱源として使用するガスが封入されているボンベです。ガスボンベ本体の色ならびに記載文字の色は高圧ガス保安法によって規定があるため、現在どのガスを使用しているのかはボンベの色でも判断できます。
(2)ホース
ガスの種類ごとに定められたJIS規格(日本産業規格)に適合する色や寸法、厚さを持つガス溶接用のホースです。
(3)圧力調整器
可燃性ガスや酸素ガスの量(圧力)を調整するための機器です。作業者は圧力計ゲージの数値を参考に、調圧ハンドルの開閉でガス量の調整を行います。ボンベ側(高圧側)とトーチ側(低圧側)の2つが使用されます。
(4)ガス溶接トーチ
作業者が実際に手に持って溶接作業を案内するための道具です。可燃性ガスと酸素ガスの混合を行う混合室、実際に炎を吹き出させる火口、火口を装着するトーチヘッドなどから構成されています。
(5)専用ライター
ガス溶接トーチから噴出しているガスに点火するためのライターです。ほかのライターだと点火時に手のやけどやそのほかの事故につながる恐れがあるため、ガス溶接専用のライターを使用します。
5.ガス溶接機を取り扱うおすすめメーカと主力商品
ここからはガス溶接機を取り扱うおすすめのメーカと主力製品をご紹介します。今回紹介するのは、「一般社団法人 日本溶接協会」から認められた証であるJWAマークを得ている、安全性や品質が優れているメーカに絞りました。
JWAマークは(一社)日本溶接協会(JWES)がガス溶断器(手動ガス切断器、手動ガス溶接器及び溶断器用圧力調整器)の性能、寸法、安全性などの製品品質が安定していることの証明を責任を持って認定した合格マークです。 (引用:一般社団法人 日本溶接協会) |
(1)株式会社千代田精機
株式会社千代田精機は、「ガス溶断機器および供給システムの設計・製作」や「高圧ガス供給における制御システムの設計・製作」や「ガス・コントロールシステムのコンサルティング」など、あらゆる産業用ガスのソリューションを提供するメーカです。
手動ガス溶接機はもちろん、ガス用の圧力調整器や火口、ガス切断機などさまざまなガス加工の製品を取り扱っています。
【製品情報】
・00号溶接器(AC用)
・小型溶接器(AC用)
・グリッター2号溶接器(AC用)
- 住所:神戸市長田区東尻池町7丁目9番21号
- TEL:(03)5755-5780(代)
- URL:https://www.chiyoda-seiki.co.jp/index.php
(2)小池酸素工業株式会社
小池酵素工業株式会社とは、1918年の創業以来、ガスエネルギーを利用した工作機械を取り扱ってきた老舗メーカです。溶接機や溶接治具、そのほか溶接にかかわるさまざまなアクセサリーも販売しています。
ガス溶接機以外にも、産業用ガスやガス供給機器、調整器なども取り扱っており、さらに生産管理システムやナビゲーションシステムなどの管理系システムも取り扱っています。
【製品情報】
・A1号溶接器(コック式・バルブ式)
・3号甲溶接器ゴールド
・大型溶接器ゴールド
- 住所:東京都墨田区太平3-4-8 KOIKE Bld.7階
- TEL:各支店による
- URL:https://www.koike-japan.com/home
(3)株式会社坂口製作所
株式会社阪口製作所とは、扱いやすさや機能性、安全性を重視した高付加価値・高品質の製品を提供する溶接・切断器具のメーカです。
「常に最高を目指す」という経営理念のもと、関西地方を中心にガスや電気溶接、ガス調整器、集合装置などに関するソリューションを提供しています。
【製品情報】
・[WT-00] 00号溶接器
・[WT-05] 板金溶接器
・[WT-04] 大型2号溶接器
- 住所:大阪府八尾市南本町9丁目5番4号
- TEL:072-993-1212
- URL:http://www.japansakaguchi.co.jp/index.htm
5.製造業のWebマーケティングに関するご相談は株式会社ストラーツへ
ガス溶接機の導入やガス溶接機を利用した製造ラインの改善については、各種メーカ以外にも、機械導入のサポートを行うメーカに相談することも可能です。
いずれにしても、機械導入で少しでも懸念点があるときは、経験豊富な専門家に相談することをおすすめします。
株式会社ストラーツでは、問合せにつなげる製造業ウェブサイトや記事の制作・納品までを行っています。
ウェブサイトや記事は広告と異なり、一度制作した後は、コストをかけなくても問合せ・リード獲得をし続けるという点が大きなメリット。
また、ストラーツには製造業の技術部門経験を持つライターが多数所属しており、高い専門性とSEOを両立しています。
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