インパルス溶着の原理と特徴 装置導入の参考事例やメーカ3社も紹介

加熱したチップを使って熱カシメを行うインパルス溶着は、さまざまな接合ができます。またナットを圧入したり、ねじレス化が可能になったりと活用範囲も幅広いのが特徴です。

本コラムでは、そんなインパルス溶着の原理や特徴、注意点、加工例について詳しく解説しています。インパルス溶着機導入に役立つ導入事例や相談先についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

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1.インパルス溶着とは一体なに?仕組みの解説と優れた特徴について

インパルス溶着は、加熱したチップ(溶着機の先端部)で樹脂を溶かして接合する技術です。

使える材質や用途が多く、樹脂と異種材の接合にも使えます。チップを交換すれば、特殊形状や精密部品にも対応可能です。

接合部の強度が高くキレイに仕上がるため、さまざまな工場や工程で活躍しています。

(1)インパルス溶着とは?仕組みについて

インパルス溶着機は、加熱したチップを直接ワークに当てて使います。熱源は抵抗体に電流を流すと発生する熱エネルギー(ジュール熱)です。

インパルス溶着の基本工程は、以下のとおりです。

  1. 電流を流し、チップ(抵抗体)を加熱
  2. チップを接合部に当て、樹脂を溶かして接合
  3. チップ内のパイプを通してエアーを噴射し、チップや樹脂を冷却する
  4. 樹脂からチップを離脱させるため、再加熱する
  5. チップを樹脂から離してエアーで再冷却

自動型のインパルス溶着機になると、多数のチップを同時に制御できます。複数の接合部を同時に加工できるため、接合箇所が多くても加工時間は変わりません。

(2)インパルス溶着の優れている特徴

短時間の通電で接合するインパルス溶着は、温度や時間の調整が可能です。ワークや環境に合わせて条件を設定できるので、効率良く加工できます。

インパルス溶着の主な特徴を、以下にまとめました。

  • 加工条件の調整により、安定した強度や品質を維持できる
  • 均一に加熱できるため、キレイに接合できる
  • 振動を与えないので、繊細な加工が可能
  • ワークに与えるダメージが少なく、ひずみやガタつきが生じにくい
  • 再加熱によって、チップやワークの損傷を防ぐ
  • 加熱や冷却時間が短く、安全性が高い

またインパルス溶着は稼働時のみ通電するため、ムダな電力を消費しません。機械の騒音も発生しないので、省エネルギーでクリーンな作業環境を実現できます。

(3)同素材から異素材まで幅広く活用できる

インパルス溶着は、さまざまな熱可塑性の樹脂を接合できます。接合できる樹脂の一部をご紹介します。

  • ABS樹脂
  • PP樹脂(ポリプロピレン)
  • PS樹脂(ポリスチレン)やPE樹脂(ポリエチレン)
  • PC樹脂(ポリカーボネート)
  • POM樹脂(ポリアセタール)
  • PMMA樹脂(アクリル)
  • PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)

インパルス溶着では、同じ素材の樹脂だけではなく、異なる種類の樹脂も接合できます。樹脂を通す素材なら接合できるので、金網や不織布との接合も問題なく可能です。

ただしガラス繊維を含む樹脂や複雑な形状の接合には、特殊なチップが必要になります。

製品やチップによって接合できる素材が異なるため、事前に確認してから導入を検討してください。

2.インパルス溶着はどんな用途で使われる?加工例や活用時の注意点

インパルス溶着は、さまざまな用途に使用できる技術です。

大きな自動車パーツから小さな精密部品まで、あらゆる部品の接合に使われています。チップや加工条件の変更により、複雑な形状や特殊条件のワークにも対応可能です。

さまざまなパーツを短い時間で効率良く接合できるため、導入する工場が増えています。

(1)インパルス溶着がどんな用途で使われるのか

インパルス溶着機は主に、カシメ加工や圧入(※)用の装置として使われています。

カシメ加工とは、樹脂の溶融で部品を繋ぎ合わせる接合方法です。ネジを使わず部品の接合ができるため、生産コストやパーツの重量を低減できます。

実際にインパルス溶着でカシメ加工を施したパーツの一例を、下記にまとめました。

  • 自動車用ランプやシートの周辺部品
  • 携帯電話ケースやデジカメ、デジタル家電の基板
  • カメラレンズや電子機器の精密部品
  • パソコン用マウス

(※)圧入とは、ネジやナットを加熱・加圧して樹脂に埋め込む加工方法です。ネジやナットが樹脂と密着するので、接合部の強度が非常に上がります。

インパルス溶着による圧入加工は、自動車パーツやオーディオ部品に使われています。

(2)具体的な加工例について

インパルス溶着で樹脂同士を接合させる主な加工パターンは、以下の2つです。

  • 異なる樹脂の接合は、親部品の樹脂を溶融させて子部品と固定する
  • 同じ素材の樹脂なら、親部品と子部品の両方を溶融させて接合する

インパルス溶着は異なる素材とも樹脂を接合でき、材質変更による手間がありません。

  • 金網と接合する際は溶かした樹脂に金網を埋め込む
  • 不織布は繊維の中に樹脂を入り込ませて接合する
  • フィルターと樹脂の接合は、フィルターの上から加熱して固定する
  • レンズを固定する場合、レンズ外周の樹脂を溶かして密着させる

ネジやナットの埋め込み、穴の封止にも利用可能です。チップや加工条件を変更すれば、さらに用途の幅が広がります。

(3)インパルス溶着を活用する際の注意点

インパルス溶着は汎用性が高く、さまざまな材質や用途に活用できます。

※一般的なチップの形状は円筒形や角型です。しかし、以下のケースで使用する場合は、特殊なチップが必要になります。

  • 硬いエンプラ系樹脂の接合
  • ガラス繊維を含む樹脂への使用
  • 複雑な形状や、特殊な条件の加工
  • 極小部品の接合

複雑な形状や極小部品は、ワークに合わせたチップで加工します。一方で、エンプラ系やガラス繊維を含む硬い樹脂の加工になると、耐摩耗性の高いチップが必要です。

そのため、インパルス溶着機を導入する際は、チップのカスタムメイドに対応しているか確認してみると良いでしょう。

3.インパルス溶着機の導入事例をご紹介!用途は多彩で事例豊富

インパルス溶着を行う装置であるインパルス溶着機は、以下の3種類に分けられます。

  • 手動で使うハンディタイプ
  • 多数のチップを取り付けて使える自動運転タイプ
  • 1台で5つの工程を行う複数工程タイプ

製品によって使用できるチップの数や制御機能が異なるので、接合部の数や用途に合った溶着機を選びましょう。ここでは、現場で活躍しているインパルス溶着機の導入事例をご紹介します。

(1)自動車のスポイラー製造にハンディタイプを導入

自動車部品を製造するメーカで、スポイラー(外装パーツ)の加工にインパルス溶着機を導入した事例です。

スポイラーの作業工程では、不織布と部品を取り付ける加工に時間がかかっていました。湾曲したスポイラーの両端を4か所ずつ溶着し、正確に取り付ける必要があったためです。

作業効率を良くするために導入したのは、ハンディタイプのインパルス溶着機でした。ハンディタイプはチップと電源ユニットだけではなく、受け治具もセットになった装置です。

同メーカでは、スポイラーを固定する受け治具に、ガイドピンを設置したカスタムメイド品を採用。ガイドピンが接合位置の目安となったおかげで、位置決めや接合作業の効率が向上しました。

(2)ハイブリッド自動車のパーツ製造に自動運転タイプを導入

自動車向けの樹脂部品を製造するメーカは、ナットの圧入工程にインパルス溶着機を導入しました。

ハイブリッド自動車の電池部品には、多数の微小ナットが使われています。そのため、小さなナットを圧入する工程に時間がかかっていました。

生産速度を上げるために導入したのは、7か所同時に圧入できるようカスタムメイドした自動運転タイプです。

該当のメーカはカスタム機を2セット導入し、14か所の加工を一括で行っています。カスタム機にはチップ位置の目安となるガイド機構が付いており、圧入位置が異なるワークにも対応可能です。

加工条件に合わせた溶着機の導入により圧入速度が上がり、生産時間の短縮に成功しました。

(3)複数工程タイプの導入で生産効率が向上

自動車のドアトリム(内装パーツ)製造を行っている企業で、インパルス溶着機を導入した事例です。

ドアトリムの部品接合用にカスタマイズした複数工程タイプを導入し、5工程を1台のインパルス溶着機で行っています。

工程順は、以下のとおりです。

  1. 表皮の色検知と、部品の有無検査
  2. インパルス溶着で接合
  3. エアシリンダで圧着
  4. グリスを塗布する
  5. 動作確認を行う

複数工程タイプには、以下のメリットがあります。

  • 単独で装置を揃えるよりも導入コストが安い
  • 工数が減るため生産時間を短縮できる
  • 設置に必要なスペースは1台分
  • オペレーターを効率よく配置できる

上記のメリットにより、複数工程タイプを導入した工場では生産効率が大きく向上しました。

4.インパルス溶着機を開発するメーカ3選

インパルス溶着機を開発しているメーカで、多くの導入事例を持つ企業を3つご紹介します。いずれも高品質な製品を提供するだけではなく、製品導入までの支援が手厚い企業ばかりです。導入をお考えの際は、下記のメーカから選べば間違いないでしょう。

(1)ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社

ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社は、プラスチック溶着機の製造や販売を行うメーカです。特許を取得している独自の技術で、瞬時に加熱や冷却を行う画期的なインパルス溶着機の製造を行っています。

下記の動画は、ムネカタインダストリアルマシナリー社のインパルスウェルダーデモ動画です。

(2)精電舎電子工業株式会社

精電舎電子工業株式会社は、プラスチック用の溶着機や溶断装置を提供する専業メーカです。溶着や溶断に関わる工法を網羅しているため、工法の選定や自動化への切り替え方法も相談できます。

取り扱うインパルス溶着機は、トランス一体型と分離型の2種類です。

(引用:精電舎電子工業株式会社 インパルスウェルダー

(3)株式会社クリエイトダイス

株式会社クリエイトダイスは、プレス金型やプラスチック溶着機を製作しているメーカです。使いやすい装置を提供するために、オーダーメイド品をメインに販売しています。チップや電源ユニットだけではなく、装置の寸法や動作プログラムもカスタマイズ可能です。

クリエイトダイス社のインパルスウェルダーは、下記のデモ動画もご確認ください。

5.製造業のWebマーケティングに関するご相談は株式会社ストラーツ

インパルス溶着機は、活用範囲が幅広いので比較的導入しやすい装置です。しかし扱いやすい反面、課題に対する適切な運用は知識と経験が求められます。

自社でどのような課題があって、解決するにはどんなアプローチが必要か。もし悩むようでしたら、客観的な目線で判断できるメーカに相談するのがおすすめです。

株式会社ストラーツでは、問合せにつなげる製造業ウェブサイトや記事の制作・納品までを行っています。

ウェブサイトや記事は広告と異なり、一度制作した後は、コストをかけなくても問合せ・リード獲得をし続けるという点が大きなメリット。

また、ストラーツには製造業の技術部門経験を持つライターが多数所属しており、高い専門性とSEOを両立しています。

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