赤外線を使った溶着技術│メカニズムや特徴、事例、メーカ3選を紹介

赤外線を利用した溶着はメリットが多く、熱板溶着に比べてより安全で制御のしやすいものです。また溶着時の強度も高いため、現在日本でも導入する事例が増えています。

メリットやデメリットを理解した上で導入すれば、より安全性・製品の質を高めた上で生産効率の向上に寄与するでしょう。本記事では、赤外線を用いた溶着の基本を解説しています。また、赤外線を用いた溶着機の販売メーカもご紹介しているので、導入するときに役立てていただければ幸いです。

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1.赤外線溶着の詳しいメカニズムとは?特徴や欠点・用途についても解説

赤外線溶着とは、赤外線を利用して樹脂を接合する新しい溶着方法です。繊細で素早い接合が可能な上、ワークへの影響が少なくきれいに仕上がります。

欧米では多くの生産工場が導入しており、日本でも熱板や振動を利用するタイプから切り替える工場が増えている技術です。

(1)赤外線溶着のメカニズム

赤外線溶着は、赤外線による熱と圧力で樹脂を接合する技術です。樹脂の接合面を溶かして溶着するため、接着剤や固定装置は必要ありません。

溶着は、以下の手順で行われます。

  1. 赤外線ヒーターで樹脂の接合面を加熱する
  2. 樹脂部材が融点に達し、接合面が溶融する
  3. 溶融した接合面を接触させ、さらに圧力を加える

赤外線溶着は熱板溶着と混同されがちですが、両者は原理が異なります。熱板タイプは高温に加熱した熱板を接合面へ押し当て、接合させる技術です。

熱板型は赤外線ヒーターよりも加熱に時間がかかる上、接触面しか溶融しません。一方、内部まで加熱できる赤外線ヒーターは、熱板よりも溶融量が多く、溶着強度は高いのが特徴です。

(2)どんな特徴があるの?

赤外線には、ぶつかった物体の温度を上昇させるという特徴があります。

温度の上昇を引き起こすのは、赤外線のエネルギーです。空気を通じた対流伝熱よりも熱伝導率が高く、無駄なく均一に加熱できます。

赤外線溶着は赤外線を最大限に活用しているため、次のような特徴があります。

  • ワークに接触させなくても使える
  • 溶融量が多く、接合部の強度や気密性が高い
  • 材料に与えるダメージが少ない
  • 制御性に優れるため、接合面のみを狙って加熱できる
  • 寸法が違っても、均一な加熱が可能
  • 使用できる材質が多い
  • ワークごとの型が不要

(3)赤外線溶着はどんな用途で使われているのか

赤外線溶着の用途は、樹脂製品の接合に使用されています。例えば円形や大型の樹脂製品だと、複数のパーツに分けて射出成形するのが一般的です。

しかし、射出成形したパーツはそのままだと使えないため、溶着して組み立てる必要があります。具体的な加工製品は、下記のとおりです。

  • パイプやチューブ、自動車部品の吸気管
  • スイッチやセンサ
  • 自動車や住宅設備向けの樹脂タンク
  • タッチパネルや表示器

上記以外にも、小さなパーツや軟材質の接合で活躍しています。使用する主な素材は、熱可塑性プラスチックやガラス繊維を含んだ樹脂です。また高融点材料や低粘度物質、発泡材にも使えます。

使える素材は製品によって異なるため、事前に確認してから導入を検討してください。

(4)赤外線溶着のメリット・デメリット

赤外線溶着は、メリットの多い技術です。

  • 非接触型なので、糸引きの心配が無くメンテナンス性に優れる
  • 接合部の強度が高く、厚いワークでも母材と同等の強度を維持できる
  • キズやフラッシュ(バリ)、粉塵や樹脂粒子を発生させない
  • 制御性に優れるので、3Dや複雑な形状のワークにも対応可能
  • 寸法違いのワークも、均一に加熱できる
  • 接合面のみ加熱できるため、接合部以外への影響が少ない

赤外線溶着のデメリットは、以下の4点です。

  • 赤外線で加熱しすぎると、ワークが損傷する
  • 加熱時以外は待機状態なため、加熱に時間がかかる
  • 熱硬化性プラスチックやシリコン製樹脂の接合には不向き
  • 赤外線ヒーターが高額なので、初期費用や修理費が高い

実際に導入する際はメリット・デメリットを比較し、自社の生産に最適な溶着機を導入するようにしてください。

2.赤外線溶着の導入事例を知って具体的な活用状況をイメージしよう

赤外線溶着は、熱板型や振動タイプよりもワークに与えるダメージが少ないです。そのため、自動車用パーツから電子部品まで、大小さまざまな樹脂製品の加工に使用されています。また、制御性に優れるため、工場の自動化に導入する工場も多く見られます。

ここでは幅広い分野の工場で活躍している、赤外線溶着の導入事例をご紹介します。

(1)輸送ボックスの製造に赤外線溶着機を導入

スーパーマーケットや病院への納品時に使われている輸送ボックスの製造に、赤外線溶着機を導入した事例です。

高密度ポリエチレンの輸送ボックスは、平らなパネル状のパーツを組み立てて作られています。しかしパネルは厚みや形状が異なり、ワークにあいている穴も大きさや形がバラバラです。そのため、他の溶着機では、自動による素早い組み立て溶着が困難でした。

課題を解決するために導入したのは、短波長の赤外線溶着機です。

短波長の赤外線ヒーターはサイクル時間や応答性が早く、制御性に優れています。出力が異なる短波長の赤外線溶着機を適切に配置し、条件に合わせたスピーディーな自動製造を実現させました。

(2)ホットメルト接着剤から赤外線溶着への切り替え

排水システムの大手メーカでは、ポリプロピレン検査ユニットの接着方法が課題になっていました。

検査ユニットは、検査する排水システムの深さに合わせてパーツを追加して溶着します。深さによって形状や長さが異なるため、溶着には制御しやすいホットメルト接着剤を使用していました。

しかし、ホットメルト接着剤は気化するので、換気せずに吸い込むと人体へ影響する恐れがあります。そのため、人体に優しく効率的な接着方法へ、早急に変更する必要がありました。

課題を解決したのは、石英ガラス製の赤外線溶着機です。加熱時間が短くオンとオフの切り替えも早いので、クリーンで効率の良い接着が可能になりました。

(3)熱板溶着から赤外線溶着への切り替え

圧力タンクを製造している会社では、熱板で円筒形の圧力タンクを溶着していました。

円筒形の圧力タンクは、ガラス繊維ポリプロピレン製のパーツを組み立てて作ります。しかし熱板の溶融温度では、ガラス短繊維がむき出しになってしまうという問題を抱えていました。

熱板はガラス短繊維の接触により摩耗し、加熱で摩耗が促進します。そのため熱板の交換頻度が高くなり、メンテナンスの費用が嵩んでいました。

問題を解決するために選ばれたのは、短波長の赤外線溶着機です。この溶着機は、4面あるヒーターのうち加熱に必要な2面だけを使用することが可能で、それによってワークや加熱体へのダメージを激減させることに成功しました。

3.赤外線溶着機を販売している主要メーカ3選

最後に、赤外線溶着を行う装置(赤外線溶着機)の販売メーカをご紹介します。メーカが多すぎて選べない……と悩んでいる場合は、まずこちらの3社から検討するのがおすすめです。

(1)エクセリタスノーブルライトジャパン株式会社

エクセリタスノーブルライトジャパン株式会社は環境やエレクトロニクス、工業分野で積極的に活動しているグローバル企業です。日本の溶着治具メーカであるヤマウチ精機会社と協力して、赤外線の溶着技術を確立しました。

https://heraeus.wistia.com/medias/q6d851yiei

下記の図は、エクセリタスノーブルライト社の特殊赤外線ヒーターです。

(引用:エクセリタスノーブルライト社製 特殊形状赤外線ヒーター

(2)日本エマソン株式会社(ブランソン事業本部)

日本エマソン株式会社は産業分野から商業分野まで、幅広い市場にエンジニアリングサービスを提供するグローバル企業です。ブランソン事業本部からは工業用の溶着機や接合機、精密洗浄機を提供しています。

下記の動画は、日本エマソン株式会社(ブランソン事業本部)の「一括照射型レーザー溶着機」です。

(3)コスモシステム株式会社

コスモシステム株式会社は、溶着機の製造や販売を行う国内企業です。独自の技術と豊富な経験により、さまざまな種類の溶着機やセットで使う自動装置を提供しています。

下記の図は、コスモシステム社の大型水平サーボ駆動式赤外線溶着機です。

(引用:コスモシステム株式会社 赤外線溶着機

4.製造業のWebマーケティングに関するご相談は株式会社ストラーツ

赤外線溶着機は、従来の溶着よりも熱伝導性に優れています。強度の高い溶着が可能なので、検査工程での工数を減らしつつ安全性の高い生産が可能です。

しかし実際に導入するとなれば、具体的にどれくらい生産へ貢献してくれるのかわからない点も多々あります。

そういった場合は赤外線溶着機の導入実績や知見があるメーカやロボットシステムインテグレータに相談し、具体的な課題と解決までの道筋を見つけてもらうのも一つの手です。

株式会社ストラーツでは、問合せにつなげる製造業ウェブサイトや記事の制作・納品までを行っています。

ウェブサイトや記事は広告と異なり、一度制作した後は、コストをかけなくても問合せ・リード獲得をし続けるという点が大きなメリット。

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